馬庭念流の「脱け」の技術、他流剣術ですと「相抜け」と呼ばれる刀の技法がとても興味深いです。『念流兵法心得』に記されてる言葉で、七分三分の見切りについて書かれたくだりが印象的でした。
「その脱けの業は、七分三分と知るべし。敵七分打ち出す処へ、我三分なる体中制の正直にて、敵の太刀の右方に進めば、自然に脱ける事を得。たとえ脱け損するも、体中剣なれば、敵の太刀と我太刀、鱗型となり、我に当たる処なし」
七分三分は、相手の攻撃が七分到達するまで引き付けて動かないこと、こちらは三分の間合いでゆとりをもってかわすこと。後手必勝、後之先の技で、七分(70%)まで待たないと相手が反応できてしまって。動きだしに焦って逃げてしまうと、相手は目で追えて、動きを止めて、切り替えることができる感じ。
こちらの三分(30%)の間合も、100%当たらない距離まで避けようとすると、動作が大きくなって遅くなり、こちらからの反撃を当てることができなくて。刀を真正面で受け止めず、ギリギリ当たらない30%の横移動で少しの余裕をもって相手の攻撃を受け流す感じ。
鱗型とは、刃と刃が当たる三角形の角度みたいですね。運動力学の「斜面の原理」で、少しの力で相手の攻撃をずらす感覚。位置エネルギーの考え方で、物を垂直に持ち上げるよりも、斜面を転がした方が楽にその高さまで上げられる感じで。刀を斜面にみたてて、相手の剣筋を横方向にずらす感じ。
相抜けは攻防一体の交叉法で、踏み込みながら刃を盾にして相手を制する感覚、素手ですと太気拳さんの「差し手」が近い印象ですね。相手が攻撃してきた腕や脚、クロスするようにしてこちらの腕を差し込む流れで、七分三分の見切りがあってこその交差術、とても興味深いです。
読書書籍:兵法秘伝考 / 戸部新十郎