動くと隙ができる。重心の移動は不安定の始まり。攻撃をするということは、動き続ける重心を制御しなければならなくなる。なので、動いた相手の状態を見極め、不安定な重心、隙を利用する「後発先至」が有利というお話。
「捨己従人」(己を捨てて、人に従う)、「後発先至」(後から発して、先に至る)の原則は太極拳技法の総則である。
(中略)
これは「相手が強く我は弱い」という客観性を通じて決まってくる。相手を先に動かして攻めさせることにより、自己の技法(による反撃)の対応が根拠のある具体的なものとなり、盲目的な動きを避け、さらに相手の弱点を利用することもできる。しかし、後発しても必ず先至しなければならない。
(中略)
「従人」となるのは、相手に我を先に打たせないためで、「先至」とは「従人」である前提で、我が先に相手を打つということである。
詳解 太極拳推手訓練秘訣
ただ、先に動くことは時間的に有利であるので、守りに入ってしまうと、ただただガードという「受動的な反応」しかできなくなる。後ろに下がるだけで、追い詰められてしまうというパターンに陥る。
そこで、古武術で言う「後の先」…相手よりも後に動きはじめて、相手より先に攻撃する方法で優位に立つのがポイント。そして、そのためには、まず「相手に従う」ことであり、そのためには「己を捨てる」こと。「勝つ為に勝とうという心を捨てる」こと。 「後発先至」のための「捨己従人」という原則の組み合わせが興味深い。
つまり、「後之先」で有利な状態で勝つためには、一旦、心の中では「勝つことを捨てる」状態になっているということ。相手の攻撃を受け入れつつ、隙間に流れ込む。水のような心理状態がポイントということでしょうか。